
今年の6月。長崎県五島列島に教会巡りをしたときに見つけた奇妙な枕である。
木枠の表面にタイル状に細分された陶器片らしきものが貼り付けてある枕だ。
ご承知のように陶器製の枕である「陶枕(とうちん)」は中国から我が国にも
伝来している。最近埼玉県のある民家の蔵を調査していたらそれがあった。
瓢箪模様の青磁の陶枕である。

そもそも陶器の枕は首筋に当てると冷たいので夏用の枕として使用した。
故にこの青磁の陶枕も内部は空洞であるのは言うまでも無い。
さて本題に戻そう。五島で発見した枕は私にとっては始めての出会いである。
それがすぐに枕だと思ったのには分けがある。実は枕の上に乗っている陶片
をつなげた織物のようなものを昨年伊勢の古い道具屋で購入したのである。
いつごろの物か、枕であるかについては店の女主人の知識は無かった。
この店は明治以来の陶器が店の奥まで埃をかぶって存在しているまるで
”荒物博物館”のような貴重な存在である。その日はいつも表にいたおばあ
ちゃんがいなかったので用途不明品ということであった。しかしその表面の
白いタイル状の陶片を触ると枕ではないかという直感が働いた。
さて、家に持ち帰って枕に置いて寝てみることにした。今夏の猛暑には誠に
心地よいがすぐに体温が伝わって暖かくなってしまう。やはりこの織物は枕
では無いのか。よくよく調べると100個以上の陶片には縦横に細い穴が
空きその穴を編むように糸で連結している。陶片には二つの文字が書かれて
いるが私の知識では意味不明の二文字だ。強引に”夢”という文字ではないか
と辞書を当たっても違う。
ということで私はその枕と思われる道具に解答を与えないままに五島に来た
のであった。五島の枕は正に私の疑問に正しい解答を提供してくれた。
陶片の織物は竹で作った枠の上に乗っている。陶枕のように下は空気である
ので熱を放散する。籐枕という籐で編んだ夏用枕があるが原理的にはそれに
陶片を置いたと考えればよい。誰がいつごろ考えて巷に出回ったかは現在の
所は不明である。どなたか特許情報などを調べていただけないものか。
さて私の陶片枕に合う枠を探すことにしよう。